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読書記録: AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

AI vs. 教科書が読めない 子どもたち 読了。

 

私の知る限り、AIとAI技術の違いについて、わかりやすく説明している唯一の本。理論的で読みやすい本でした。

本の趣旨は以下の2点。

①東大くんの取り組みを通した、AI技術の限界についての説明。シンギュラリティは起こらないとのこと。

②RST調査を用いた、"多くの中高生が教科書が読めていない"という事実の紹介。

 

気になった点が3点。

(1)コンピュータの限界について

AI技術の紹介の中で、コンピュータにできることは、①理論を扱うこと、②統計・確率を扱うこと、の2つしかないと言っている。

しかし、私としては③データを保存して並び変えることが、3個目の機能であると考えている。コンピュータによってできることであっり、論理でも確率・統計でもない。

データを保存して並び変えることができれば、シンギュラリティが起こせるのかと言われると不明だが、もう少し議論は発展するはずである。

 

(2)東ロボくんのシステムについて

AIのテスト方法にチューリングテストというものがあり、そのテストと妥当性を否定する意見として"中国語の部屋"というものがある。

"中国語の部屋"の思考実験は、外から見るとAIに見えるのに、中の仕組みを知るとAIではないと感じる。そのため、チューリングテストが妥当なのか、妥当でないのかわからなくなる。では、"中国語の部屋"の何が問題なのか。答えは、実現できないことだ。

質疑応答のシステムを考える場合、入力された言葉に対する返答をあらかじめ設定しておくことができないことはよくある。

例えば、「今晩予約可能な新宿のイタリアンを教えて。」という質問に対し、「今晩予約可能な新宿のイタリアンはありません。」と答えた後の「池袋は?」といった質問である。文脈からは、「今晩予約可能な池袋のイタリアンは?」という質問だとわかるのだが、入力された言葉のみからそれを推測するのは辞書だけでは難しい。

今回、東ロボくんがやっていることは、確率・統計を用いて巨大な中国語の辞書を作ろうとしているのに過ぎない。それは、もしできたとしてもバベルの図書館でないと保管できない規模の辞書になるだろう。このアプローチではうまくいかないだろうし、実際にうまいかなかった。

つまり、東ロボくんが東大に入れなかったのは、AIの限界というより、システム設計に失敗しただけではないかと思う。

(詳しいことは、ちゃんと論文を読まないとわからないのだけど、体力ないです。)

 

(3)AIとRST調査について

問題の説明時にAIの得意・不得意についての説明があった。ただ、実際に受けた結果はのっていない。

本を読むと、東ロボくんはRST調査の推論、イメージ、具体例について、正確に答えることができなかったと推測される。それは、文中で繰り返し、推論、イメージ、具体例がAIにとって苦手な種類の問題であると述べられているからである。にもかかわらず、"東ロボくんのスコア"の章がない。

邪推すると、案外高いスコアを出してしまったために、東ロボくんのスコアの紹介を削らざるを得なくなったのではないかと思う。数学物理のテストができているのであれば、具体例(数学)くらいは解けるとおもうし。

 

 

 

RSTの成績を上げるには世界についてのモデルが必要というのが私の持論。そのために必要なのが、体なのか、他人なのか、両方なのか、それ以外にもあるのかが今の私のテーマ。